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ゲインステージング入門:-18dBFS と -6dBFS、どちらを目安にする?
2026/11/03 更新
「ミックスを始めると、すぐにマスターの音が割れてしまう」「コンプやサチュレーターの効きが、日によって違う気がする」。こうした悩みの裏にあるのが、各トラックの音量(ゲイン)の整え方、いわゆるゲインステージングです。
ゲインステージングとは、録音から各プラグイン、最後のマスター出力までの「通り道」で、音量が大きすぎたり小さすぎたりしないように整えることです。この記事では、音響技術誌 Sound On Sound(以下 SOS)の記事で確認できる内容をもとに、-18dBFS と -6dBFS の違いと、今日からできる手順を紹介します。
「dBFS」は、デジタル音声で出せる最大の音量を 0 として、そこからどれだけ下かを表す単位です。0dBFS を超えると音が削られて「クリップ」(デジタルの歪み)になります。
「-6dBFS」と「-18dBFS」は、測っているものが違う
ネットでは「-6dBFS にそろえる」「-18dBFS にそろえる」という2つの助言が並びますが、SOS の Q&A によると、どちらも正しくなりうるものです。理由は、見ている数字の種類が違うからです。
-6dBFS:音の「一番大きい瞬間(ピーク)」の目安。録音のときに、機材の入力が割れない余裕を持たせる考え方 -18dBFS:音の「平均的な大きさ(RMS)」の目安。ピークではなく普段の大きさを基準にして、ピークの余裕をたっぷり残す考え方 録音を24ビットで行うなら、ぎりぎりまで大きく録る必要はなく、余裕を残してもノイズは十分に低い、と SOS は説明している
DAWの中では、本当は割れない。それでもそろえる理由
SOS によると、DAW が32ビットまたは64ビットの浮動小数点で処理している場合、DAWの内部ではクリップしません。技術的には、DAW内のゲインステージングは必須ではなく、オーディオインターフェースの出力に向かうチャンネルが 0dBFS を超えなければよい、と書かれています。
それでも整えたほうがよい理由として、同じ記事は次の3つを挙げています。
音量がバラバラだと、DAWのメーターが役に立たなくなる プラグインをバイパス(一時的にオフ)して聴き比べたり、別のプラグインに差し替えたりするとき、そのたびに音量を合わせ直さなくて済む アナログ機材の挙動をまねたプラグインや、決まったスレッショルド(効き始める音量)を持つプラグインは、入力が特定の大きさ付近でないと狙った効き方にならないことがある
アナログ風プラグインでは、入力の大きさが音色を左右する
SOS の「Gain Staging In Logic Pro」では、アナログ回路をまねたプラグインは、入力や出力のゲイン段まで再現しているものが多く、一定の余裕(ヘッドルーム)を前提にしている、と説明されています。各チャンネルのピークを -18dBFS 以下に保つ人もいて、これはステレオ出力が過負荷になりにくくなる点でも都合がよい、という内容です。
ただし、同じ記事は「普遍的なルールはない」とも書いています。どのくらいの入力が適切かは、プラグインごとのマニュアルで確かめるのが確実です。
今日からできる5つの手順
上の内容をふまえた、ミックスの最初にやる流れの一例です。数字は絶対ではなく、「自分の中で一定にする」ことが大切です。
1. 全トラックのフェーダーを同じ位置(0dB 付近)に戻し、音量の調整は、トラックの先頭に置くゲイン調整(トリム、Gain プラグインなど)で行う 2. メーターを RMS 表示またはVUメーター表示にできるなら、そちらに切り替える。SOS の筆者は、各チャンネルに VU メーターを置き、0VU の基準を -18dBFS にしている。-20・-18・-16dBFS のどれを選んでも、一貫していれば問題ない、と書かれている 3. 効きが入力の大きさに左右されるプラグイン(コンプなど)の前で、入力の大きさをそろえる。プラグインに入力ゲインがあれば、それも使う 4. プラグインの出力は、入力と同じくらいの大きさに戻す。ピークだけを合わせても意味が薄いので、平均的な大きさで比べる 5. マスター(最終出力)は 0dBFS に張り付けない。SOS の別記事では、マスタリングに出すミックスは、エンジニアが作業できるよう 0dBFS より数dB下に収めるよう勧められている
つまずきやすい点と対処
「メーターが -18dBFS 付近なのに音が小さく感じる」:これは平均の大きさを見ているから。最終的な音量感は、マスターの段階(リミッターなど)で作る。まずは余裕を残す 「ピークは 0dBFS 以下なのに音が割れる」:SOS は、トゥルーピークメーターでも完全に正確ではないので、1〜2dB は余裕を残すとよい、としている 「マスター出力を 0dBFS にそろえた」:再生環境によってはクリップした音が問題になることがある、と SOS が書いている。余裕を残す
ほかの記事もあわせて
音量の整え方を覚えたら、無料のEQとコンプで実際に試してみるのがおすすめです。「無料EQ・コンプ TDR Nova と Kotelnikov」(/guide/free-eq-compressor-tdr-nova-kotelnikov)と、「無料リバーブ・ディレイ Valhalla Supermassive の使い方」(/guide/free-reverb-delay-supermassive)も参考にしてください。音が途切れる・遅れる場合は「バッファサイズと音の遅れ・途切れ」(/guide/buffer-size-latency)です。エフェクト系の無料プラグインは「エフェクト・ミックス」カテゴリ(/category/effects)、無料配布は「無料配布」カテゴリ(/category/free)で探せます。
よくある質問
Q. -18dBFS にそろえるのは必須ですか? A. いいえ。SOS は「普遍的なルールはなく、一貫していれば数字はどれでもよい」としています。 Q. DAW の内部でも、ゲインを気にする必要はありますか? A. 技術的には必須ではありません。ただし、メーターを役立てる・聴き比べをしやすくする・アナログ風プラグインを狙いどおりに効かせるために、整えておくと便利です。
運営者のひとこと
私の Mac には Logic Pro と FL Studio、それに無料のメーター Youlean Loudness Meter 2 と SPAN が入っています。音量は耳だけだと時間や体調で感じ方が変わるので、私なら耳で決めたあとにメーターの数字でも確かめる順番をおすすめします。
— ともえ(DTM PICKS 運営者)
参考